そうは言っても

重箱の隅をつつくタイプのブログです

うろおぼえトラウマ児童文学ベスト10

 「めちゃめちゃこわかったのは覚えてるんだけど、内容は思い出せないんだよね」って本、ありませんか?地域の図書館、あなたのまわりにいる本好きの友達、「あの本のタイトル教えて!@児童書板」で「またか!」と言われる前にここで調べてみてください。

 

ブリッグズ(1998)『風が吹くときあすなろ書房

「おじいさんとおばあさんが戦争に巻き込まれる」「老夫婦が爆弾で家に閉じ込められる」とにかく老夫婦と戦争のワードが出てきたらだいたいこの絵本。絵と話のえげつなさから「検索してはいけない言葉一覧」にも入れられています。これは映画化されていて(主題歌はデヴィット・ボウイ!)、平和学習だかで見せいで、よりいっそう記憶がこんがらがっている人も少なくないです。

 

川島誠(初出1985)『電話がなっている』(『セカンド・ショット』(2003)角川文庫収録 現在は絶版)

『電話がなっている』(1985年刊行国土社ニューファンタジー版)を持っている方、お家で火事が起こったらこの本を持って逃げてください。そのレベルで貴重です。いままでは「角川文庫のを読めばいいよ!」と言ってましたが、残念ながら2020年現在、こちらも絶版。人口が増えすぎた近未来が舞台のSFです。この世界では15歳のときに実施する全国民参加の学力テストで進路のすべてが決まります。運動も勉強も平凡な主人公の「ぼく」は、才色兼備の「きみ」のおかげでこのテストにどうにかパスします。でも「ぼく」は「きみ」に合わせる顔がない。その理由は……。このオチを言っちゃうと全部台無しなので言いませんが、「主人公の男の子が好きな女の子を缶詰にする話です」とまちがえて覚える人が多いです。缶詰にはしないぞ!

 

P・デッキンソン 唐沢則幸(訳)(1994)『エヴァが目ざめるとき』徳間書店

 「女の子が猿になっちゃう話を探してるんですけど」と相談する人が多いです。正確に言うと、「事故で昏睡状態になった女の子の脳がチンパンジーに移植」されます。猿に変身するわけではない。別にそんな怖い話ではないんですけど、滅びに向かっている近未来の雰囲気がなかなか暗いこともあってトラウマになってる人が多いですね。

 

三田村信行 (2003) 『おとうさんがいっぱい(新・名作の愛蔵版)』

 「夢を見てたら自分が消える話」「家から出られなくなる話」「お父さんが増える話」全部同じ作者の同じ文庫本に入ってます!字も大きくてストーリーもわかりやすいので、星新一なんかが好きな小学生にウケると思います。絶版ですが三田村の作品だと『ものまね鳥を撃つな』『ぼくが恐竜だったころ』も面白いです。こっちは長編。

 

グードルン・パウゼヴァング 高田ゆみ子 (訳)(2006) 『みえない雲』小学館

グードルン・パウゼヴァング 高田ゆみ子 (訳)(1984)『最後の子供たち』小学館
 どちらも核戦争で子供が主人公のせいかごっちゃにして覚えている人が多い。『みえない雲』は学校で、『最後の子供たち』祖父母宅に旅行中に核戦争が発生します。『みえない雲』のほうは2014年にブレイク間近の上白石萌音ちゃん主演で舞台化されています。見た人は自慢できるぞ!

 

京極夏彦 作 町田尚子 絵  (2012) 『いるのいないの(怪談えほん)』 岩崎書店

 発売当初ネットでかなり話題になったせいか、その記憶が残っている人が多い!とくにラストがめちゃめちゃ怖いので、初めて読むときは明るくて人がたくさんいるところで読もう!このシリーズは他にも有栖川有栖先生や小野不由美先生が書いていてもう最高ですよ。

那須正幹 (2003) 『The end of the world』 ポプラ社
 またもや核戦争が題材です。作者は『ズッコケ三人組』の人です。あらすじとしては核シェルターで通信から聞こえた声だけを頼りに、一度も会ったことない少女に会いにいく……としか書けないです。それだけ。しかしとても美しく切ないので、みんな読んでほしい。これは結構、隠れたファンが多くて、島本理生さんに至っては小説中に登場させてます。

ハインリッヒ・ホフマン さくささきたづこ やく (1985)  『もじゃもじゃペーター』 ほるぷ出版
「子供がめちゃめちゃお仕置きされる絵本なんだけどなあ」みたいな漠然とした思い出のある方、この絵本じゃありませんか?ひょっとすると復刊ドットコムから出ている飯野和好が絵を描いてるもののほうが手に入りやすいかもしれない。どちらも面白いので読み比べてください。あとなんでだかわからないけどエドワード・ゴーリーの作品だと思い込んでる人が多い。まあ作風は似てますね。

松谷みよ子(文) 味戸ケイコ(絵) (1987) 『わたしのいもうと』偕成社
 何年か前に絵本についてのワークショップに出たら「いじめにあった子が引きこもっちゃう話なんだけど、まったく題名が思い出せなくて……」みたいな人がたくさんいました。講師の方が表紙を見せた瞬間、会場がなんとも言えない雰囲気に。作者は『モモちゃんとアカネちゃん』の松谷みよ子さんです。ストーリーは読者からもらった手紙に基づいているとのこと。

谷川 俊太郎(作) 安野 光雅(絵) (2006) 『あけるな』ブッキング

「あのー、扉がたくさん出るんです」という質問が出れば、だいたいこの本です。本当に扉がたくさん出てくる。初版は1976年。長い年月を経て、たくさんの人の声で復刊されました。それも納得の谷川俊太郎安野光雅の黄金コンビによる贅沢の極みみたいな絵本です。

谷川俊太郎(作) 沢渡朔(写真) (2007) 『 なおみ』 福音館書店
 「写真で、人形がいて……」とくればこちら。またもや谷川俊太郎。そしてありがとう福音館。これも復刊した絵本です。女の子と人形が一緒に暮らしてる話といえばそれまでなんですが、本当に子供向けにしていいのかと問いただしたくなるような色気と恐怖。モデルの女の子がまたいいんですよね。

 

見返すと絵本と戦争ものが多い。とくに核戦争もの。一年に一回くらい図書室でもう対象年齢を過ぎた本を読みたくなることありませんでしたか?「なんか世界の”真実”を探りたいな」って気持ちになって第二次世界大戦のコーナーを読んだりしませんでしたか?多分そういう体験が積み重なってトラウマ児童文学はつくられています。多分。「これがないよ!」っていう本があったら教えてください。